連絡は諸岡課長からだった。警察無線の内容をまっさきに誉に流したらしい。
巧と誉が急行したのは、被害者・香西永太の通う高校近くの有栖山記念公園だった。
規制線のビニールテープが貼られた現場は野次馬でいっぱいで、中には帝旺学院高校の生徒もいる。登校時間には早いので、朝練などで来たのかもしれない。あとは近隣の住民のようだ。制服警官が野次馬を整理している脇を抜け、公園の敷地内に入った。
木陰に横たわった香西永太の身体にはビニールシートがかけられている。遺体は調べられ、その後担架に載せられ運ばれることになるが、鑑識が到着していないため、まだそのままだ。
「他殺か。一課来ちゃうじゃん」
「特捜本部立つな。刑務課に第一会議室空けるように連絡しないと」
「面倒くせ~」
ブツブツ文句を言いながら遺体を囲む鳥居坂署の刑事課の面々の横をすり抜け、誉は遺体のビニールシートをめくった。自前のラテックス手袋をしている。
「おい! 御堂!」
もちろんすぐに気づかれる。
「おまえら、なんでいる!」
「犯抑がなんの用だ! 引っ込んでろ!」
刑事たちの怒声を百パーセント無視する誉に、巧の方が焦って頭を下げた。
「すいません。ガイシャと顔見知りなんです」
「だからって関係ないヤツらが来るんじゃねえ!」
そのとおりだ。普通ならこんなことはしない。しかし、今回は秘密裡に捜査してまして……とは言えないので、巧は曖昧にごまかしながら頭を下げ続けた。