「SNSで募集かけた形跡、見つかりましたか?」
「そんなものはこの相談があった瞬間に検索しているが、すでに削除済で見つからなかったな。人物特定ができたから、本庁のサイバー犯罪対策課に消去済みの投稿を追えるか打診してある。アカウントが複数あったり、別名義の携帯やパソコンからならすぐにはわからないが」
「御堂さんが個人的にサイバーに依頼したんですか?」
「そうだ」
「そこは、ハッキングは……」
「正規の証拠に使いたいからな。少々ツテがある」

捜査一課時代のコネクションだろうか。御堂誉は嫌われ者で一課を追われたと聞いているが、諸岡のように彼女の能力を正当に評価し、協力する人間も実は多くいるのではないだろうか。

(数は敵の方が圧倒的に多そうだけど)

そう思いつつ、シャンディガフのグラスを唇に運ぶ。すると、巧の視界に目的の少年が映り込んできた。

「御堂さん」

誉が振り向く。
明るい髪色、整った容姿。鎖骨まで開いたシャツにだぼっとしたパンツスタイルは、メンズ雑誌のモデルのようだ。香西永太は数人の男女に囲まれ楽しそうにしている。手にしているグラスはアルコールかもしれないが、判別はできない。

「こちらも思いのほか早くお出ましだ」

誉が顎で示す先には、数人の男たち。内ふたりは誉が調べ上げたCrackzの幹部だ。間違いない。
若い彼らは合流し、楽しそうに談笑している。やがて、数人で笑い合いながらクラブの奥へ消えた。おそらくは井草の言うVIPルームへ向かったのだろう。