「これ、どうしたんですか!?」

驚く巧に、なんでもないことのように誉が答える。

「幹部のほとんどが十代の頃、補導や書類送検の経験がある。生安のデータと、刑事部のデータを引っ張ってきた」

生活安全課は諸岡課長の手引きがあるが、刑事部のデータはどうやって取ってきたのだろう。それに鳥居坂署だけで済む内容ではない気がする。いったい、どこになんのツテがあるのだろう。

「係長……本庁のデータベースにハッキングとか、しちゃってないよね」

井草がおそるおそる言葉にするので、巧もはっと誉を見やる。誉はにやりと口の端を持ち上げる。

「なんのことだ」

とぼける気らしいが、どうも正規じゃないルートとツテも持ち合わせているようだ。

「あの、顔写真は割合最近のものに見えますが」

画像は荒いが、写真には二十代から三十代の青年たちが映っている。

「十代の頃の写真を元に、立ち寄り先の監視カメラの映像から取った」

さらりと言うが、作業的にひとりでこなせるものではない。誉が犯罪抑止係のデイリーワークもこなしていることを巧は知っている。情報収集手段も怖いが、処理能力の速さは同じ人間とも思えない。うすら寒くなっている巧たちをよそに、誉は仕切り直す。

「さて、すべてがまだ疑いの段階ではあるが、特殊詐欺グループの主犯格と見られる香西永太と、金銭の授受があると見られるCrackzが浮かび上がった。叶うなら、接触の現場を直接確認しておきたいな」

じろりと見られて、ヘビに睨まれたカエル状態になる巧。再びクラブに乗り込むのだろうか。巧より先に井草が言った。

「それって、俺は行かなくていいですよね~」