「こんにちは、刑事さん。えーと、お名前は」
「私は御堂、こっちは部下の階。一昨日に会った時は名乗り損ねてしまいました」
前回の対面から二日経っている。巧が陽気に言う。
「今日はお隣の麻布署管内に用事があってさ。その帰り道なんだ。偶然だね、雪緒くん」
雪緒は鞄を持ち直し、巧たちに並んで歩き出す。
「そうなんですか。僕の家、白金の方です。小学生までは鳥居坂警察署近くのマンションに住んでました」
「白金なんだ。じゃあ、俺の美声アナウンスは聞いてないかぁ。しょっちゅうパトカーから流してるんだけどなあ。『こちらは鳥居坂警察署です、振り込め詐欺が多発しています』って」
「ふふ、学校はここだから、たまに聞こえますよ」
笑うと少女のように愛らしい少年だ。巧はさらに親しげに言う。
「ところで、この前の意地悪な友達、その後どう? 嫌なことされてない?」
「あー……、なんか呼ばれなくなっちゃいました。ノリ悪いから冷めるって。俺、あんまりゲーム上手くないから、ちょうどよかったかなって思ってます」
雪緒は少し気まずげに言う。友人に仲間外れにされたことは、あまり言いたいことではなかっただろう。巧は励ますように言う。
「感じ悪いことされたね。俺たちからその子に注意してやりたいくらいだよ。ね、御堂さん」
「こら階、友人同士のもめごとに首を突っ込むものじゃない。でも、幸井くん、困ったときは相談してください。私たちは鳥居坂警察署の犯罪抑止係という部署にいます。かなり融通が利くところですので、力になれると思いますよ」
「へえ、融通が利く部署だなんて、刑事ドラマみたいですね!」
興味津々に目を輝かせる雪緒に、巧は心の中だけで呟いた。
(本当はびっくりするくらい地味でドラマのない部署だよ……)
「私は御堂、こっちは部下の階。一昨日に会った時は名乗り損ねてしまいました」
前回の対面から二日経っている。巧が陽気に言う。
「今日はお隣の麻布署管内に用事があってさ。その帰り道なんだ。偶然だね、雪緒くん」
雪緒は鞄を持ち直し、巧たちに並んで歩き出す。
「そうなんですか。僕の家、白金の方です。小学生までは鳥居坂警察署近くのマンションに住んでました」
「白金なんだ。じゃあ、俺の美声アナウンスは聞いてないかぁ。しょっちゅうパトカーから流してるんだけどなあ。『こちらは鳥居坂警察署です、振り込め詐欺が多発しています』って」
「ふふ、学校はここだから、たまに聞こえますよ」
笑うと少女のように愛らしい少年だ。巧はさらに親しげに言う。
「ところで、この前の意地悪な友達、その後どう? 嫌なことされてない?」
「あー……、なんか呼ばれなくなっちゃいました。ノリ悪いから冷めるって。俺、あんまりゲーム上手くないから、ちょうどよかったかなって思ってます」
雪緒は少し気まずげに言う。友人に仲間外れにされたことは、あまり言いたいことではなかっただろう。巧は励ますように言う。
「感じ悪いことされたね。俺たちからその子に注意してやりたいくらいだよ。ね、御堂さん」
「こら階、友人同士のもめごとに首を突っ込むものじゃない。でも、幸井くん、困ったときは相談してください。私たちは鳥居坂警察署の犯罪抑止係という部署にいます。かなり融通が利くところですので、力になれると思いますよ」
「へえ、融通が利く部署だなんて、刑事ドラマみたいですね!」
興味津々に目を輝かせる雪緒に、巧は心の中だけで呟いた。
(本当はびっくりするくらい地味でドラマのない部署だよ……)