「もしかして、今回の特殊詐欺の金がここに流れてるって考えてます?」
「まだわからない。麻布には昇鯉(のぼり)会という昔ながらの暴力団事務所もあるからな。ただケツモチを依頼するなら、二強のどちらかだろう」
昇鯉会は関東最大の暴力団組織・小鹿又(おがまた)組から分派した組だ。昭和初期から麻布界隈を仕切っている。身体に墨を入れ、シマのシノギで組を運営し、その分構成員や傘下組織はしっかり守る。どちらかといえばオールドスタイルなヤクザといえる。
その昇鯉会がCrackzには一目を置き、尊重しているらしい。勢いのある若手の集団を敵に回したくないため静観しているのだろうというのが鳥居坂署の見解だ。
Crackz、昇鯉会、どちらも幼い少年たちが勝手に稼ぐのを許してくれはしない。高校生が自分たちの組織を搾取対象にされたくなければ、条件の良い方と組むのが得策となる。
「今日は様子見だ。Crackzは一部の若者の憧れ。仲間に入りたいと思うヤツはいるかもしれない」
誉が周囲を見渡し、低く言う。
「健全なクラブだな。やましいことがなければ踏み込めない」
健全がどういう類いのことかは知らないが、誉がこのクラブにガサ入れまで考えていることに巧はぎょっとした。どこまでひとりでやる気だろう。
「御堂さん、いきなりガサは無理じゃないですか。それとも薬の取引とかそっちで無理くりCrackzに手入れするつもりですか? 組織犯罪対策課と連携しないと駄目ですよ。また敵いっぱい作っちゃいますし、そもそも人手が足りないんですからね」
「うるさい、急くな。下見だと言っているだろうが」
厳しい口調で言われ、巧はしゅんとうつむいた。
「まだわからない。麻布には昇鯉(のぼり)会という昔ながらの暴力団事務所もあるからな。ただケツモチを依頼するなら、二強のどちらかだろう」
昇鯉会は関東最大の暴力団組織・小鹿又(おがまた)組から分派した組だ。昭和初期から麻布界隈を仕切っている。身体に墨を入れ、シマのシノギで組を運営し、その分構成員や傘下組織はしっかり守る。どちらかといえばオールドスタイルなヤクザといえる。
その昇鯉会がCrackzには一目を置き、尊重しているらしい。勢いのある若手の集団を敵に回したくないため静観しているのだろうというのが鳥居坂署の見解だ。
Crackz、昇鯉会、どちらも幼い少年たちが勝手に稼ぐのを許してくれはしない。高校生が自分たちの組織を搾取対象にされたくなければ、条件の良い方と組むのが得策となる。
「今日は様子見だ。Crackzは一部の若者の憧れ。仲間に入りたいと思うヤツはいるかもしれない」
誉が周囲を見渡し、低く言う。
「健全なクラブだな。やましいことがなければ踏み込めない」
健全がどういう類いのことかは知らないが、誉がこのクラブにガサ入れまで考えていることに巧はぎょっとした。どこまでひとりでやる気だろう。
「御堂さん、いきなりガサは無理じゃないですか。それとも薬の取引とかそっちで無理くりCrackzに手入れするつもりですか? 組織犯罪対策課と連携しないと駄目ですよ。また敵いっぱい作っちゃいますし、そもそも人手が足りないんですからね」
「うるさい、急くな。下見だと言っているだろうが」
厳しい口調で言われ、巧はしゅんとうつむいた。