「そうか! わかりました、窓ですね! リストのメンバーが全員去った時間帯に電気が消える部屋が拠点なんだ。窓が見える位置に、カメラ仕掛けましたものね」
「惜しいな」

誉がにこりともせずにスマホを巧の手に載せた。

「見ろ、遮光カーテンの窓だ。マンションの間取りは単身者かディンクス用の1DK、全戸どの部屋にも南向きの窓がある。今確認した入居している部屋の中で、一部屋だけ遮光カーテンが一日中締め切られた部屋があるんだ。監視カメラで一週間以上確認しても絶対に開かない」

誉が見せてくれた映像はマンション三階の角部屋のものだ。分厚い黒の遮光カーテンがかかっている。

「単身者ならそういうこともあるんじゃないでしょうか。俺も何日もカーテン開けないことがありますし」
「他の部屋は一度か二度は開いている。朝、天気のチェックとかな。それに、このマンションは、ベランダが無い代わりに窓のひさしに洗濯を干せるようにしてある。洗濯や空気の入れ替えは、単身者でも多少はする」

確かにそうかもしれない。しかし、よほどの引きこもりならわからないぞと巧が画像をしげしげと眺める。誉が次の画像を見せてくれる。夜のマンションだ。

「光が入らない環境が要る趣味なら、そもそも南向きの物件を選ばない。入居者が旅行なら、室内は無人。こんな風に夕方から夜の一定時間だけ、カーテンの端から灯りが漏れることはない」

映像には遮光カーテンの左端がわずかに明るくなっているのが確認できた。明らかに、部屋に誰かいる証拠である。

「うおお、なるほど。御堂さん、もう一回現地に行って、実際に確認してもいいですか?」
「いいが、この後は不動産登記簿に記載されたオーナー自宅へ行くぞ」
「いつの間に法務局に行ったんですか?」
「今はネットで申請できる。上がうるさいから、決済は取らずに個人的にスマホで申請したが」

だいぶ先回りして段取りしている上司に驚きを隠せない。