感心しながら返事をする巧の横から、井草がひょいと顔を出した。

「御堂係長、あんまりやってると、怒られちゃうよ~」
「ああ」
「俺、とばっちりは御免なんで、よろしくでーす」

誉がそれ以上何も言わないでいると、井草は手をひらひらさせながら、古嶋を伴ってドアに向かう。

「ATMパトロールしてきまっす」

振り向いてひと言告げ、出て行った。

「……なんなんですかね、井草さんのあの言い方」

せっかく御堂誉が乗りだしているというのに、やる気をそぐようなことを言うべきじゃない。誉は首を左右に振った。

「井草巡査部長はあれでよく周りが見えている。私をこの案件に集中させるために自分は犯抑のデイリーワークをこなしてくれているんだろう。全員で取り掛かっていれば、犯抑が遊んでいると言われかねない」
「そんな気遣いのできる人でしょうか」

巧は口を尖らせた。井草に対する信頼は、今のところ欠片もない。今だって、何かあった時、自分が怒られたくないからあんなことを言っているだけだろう。

「さて、リストアップした少年たちの身元は割れている。しかし、彼らの誰が特殊詐欺の首謀者なのかが見えてこないな」
「首謀者がこの中にいるんですかねえ」

巧が何気なく言った言葉に、誉が注目して答える。

「階、なかなかいいことを言う。そうなんだ。この中に首謀者がいない可能性もある。資金の出所が不透明だからな」
「資金の出所?」