翌日、御堂誉は普通に出勤した。
あれほど酔っぱらっていたというのに、鮮やかな復活。オフィスに到着した巧は、昨夜の上司の姿は自分が見た夢か幻なのではと思い始めていた。なにしろ、昨夜のことについて誉は一切巧に言ってこない。案外、記憶がないパターンだろうか。
あれは相当なレアショットということで心に収めておこうと思った時だ。
「御堂、いるかい?」
朝礼の最中に穏やかな笑顔で入ってきたのは生安の諸岡課長だ。
「なにかありましたか?」
「新たな特殊詐欺が昨日夜二件起こった。鳥居坂管内だ。さきほど、被害者が署に直接連絡してきたんだ」
それを刑事課ではなく犯抑に話しにきたということは……。巧はぴんときた。
「例の手口ですか」
「そうだ。電話の時刻、受け子の来訪時刻、受け子の特徴がすべて同一だ」
誉がすぐにPCへ向かう。巧が仕掛けたカメラはまだ可動中だ。
「諸岡課長、受け子が来訪した時刻、受け子の特徴をデータでいただけますか?」
「今、刑事課で扱い中だからなあ」
「諸岡課長ならわかりますよね。情報が揃い次第流してください」
誉はカメラ画像を注視しだした。もう朝礼どころでないのは、空気でわかる。
「御堂係長~、俺らビラ配り行ってきます」
井草が古嶋を伴い、外出準備を始める。誉はそちらを見ずに「頼む」と言ったきりだ。
「御堂さん」
諸岡もまだオフィスにいて誉を見守っている。巧は声をかけた。
「御堂さん、捜査をする気ですか?」
「馬鹿を言うな、階。犯抑に捜査権はない」
PCを見つめながら、誉は答える。そして、諸岡に尋ねる。
「しかしながら、刑事課は本件を扱うでしょうか。調書を取って終わりということにするのでは?」
「あり得るね」
「よしんば本腰を入れたとしても、刑事課が解決できるとは思えない」
諸岡が、あははと軽快に笑った。
「じゃあ、仕方ないよね。御堂」
「ええ、仕方ない」
誉がにやりと微笑み、巧はいっそう激しい嵐の予感に身震いした。
「都民を守るのが、警察官の職務ですから」
闘志を秘めた声音で誉が言った。
あれほど酔っぱらっていたというのに、鮮やかな復活。オフィスに到着した巧は、昨夜の上司の姿は自分が見た夢か幻なのではと思い始めていた。なにしろ、昨夜のことについて誉は一切巧に言ってこない。案外、記憶がないパターンだろうか。
あれは相当なレアショットということで心に収めておこうと思った時だ。
「御堂、いるかい?」
朝礼の最中に穏やかな笑顔で入ってきたのは生安の諸岡課長だ。
「なにかありましたか?」
「新たな特殊詐欺が昨日夜二件起こった。鳥居坂管内だ。さきほど、被害者が署に直接連絡してきたんだ」
それを刑事課ではなく犯抑に話しにきたということは……。巧はぴんときた。
「例の手口ですか」
「そうだ。電話の時刻、受け子の来訪時刻、受け子の特徴がすべて同一だ」
誉がすぐにPCへ向かう。巧が仕掛けたカメラはまだ可動中だ。
「諸岡課長、受け子が来訪した時刻、受け子の特徴をデータでいただけますか?」
「今、刑事課で扱い中だからなあ」
「諸岡課長ならわかりますよね。情報が揃い次第流してください」
誉はカメラ画像を注視しだした。もう朝礼どころでないのは、空気でわかる。
「御堂係長~、俺らビラ配り行ってきます」
井草が古嶋を伴い、外出準備を始める。誉はそちらを見ずに「頼む」と言ったきりだ。
「御堂さん」
諸岡もまだオフィスにいて誉を見守っている。巧は声をかけた。
「御堂さん、捜査をする気ですか?」
「馬鹿を言うな、階。犯抑に捜査権はない」
PCを見つめながら、誉は答える。そして、諸岡に尋ねる。
「しかしながら、刑事課は本件を扱うでしょうか。調書を取って終わりということにするのでは?」
「あり得るね」
「よしんば本腰を入れたとしても、刑事課が解決できるとは思えない」
諸岡が、あははと軽快に笑った。
「じゃあ、仕方ないよね。御堂」
「ええ、仕方ない」
誉がにやりと微笑み、巧はいっそう激しい嵐の予感に身震いした。
「都民を守るのが、警察官の職務ですから」
闘志を秘めた声音で誉が言った。