そこから巧は家事に勤しんだ。洗い物を済ませ、キッチンを除菌シートで拭く。洗濯物をたたみ、掃除機をかけた。ペットのトカゲの水も替えようとしたが、トカゲが口を開け顎を真っ黒にしているのでやめた。よくわからないが、絶対威嚇されている。それに、誉はペットの世話だけはしているようで、水槽は綺麗に掃除され、フンなども見当たらない。
(自分の世話をもう少しすればいいのに)
いつも同じようなスーツにひっつめお団子ヘア。ばっちり化粧をすれば、外見を揶揄されるようなことはなくなるはずなのに。
(もったいないんだよな)
そこまで考えて首をぶんぶん振る。なにを考えているんだ。御堂誉が勝負すべきところは容姿ではない。
(でも、家事はすべきだな)
そう思いつつ、ソファでくうくう寝息をたてている誉に声をかけた。
「御堂さん、俺帰ります。鍵締めてくださいね! 防犯! 大事!」
「おう、大事」
誉はのそりと起き上がって、玄関で靴を履く巧のもとへやってきた。どう見ても、まだ酔っているし寝ぼけている。
「俺が出たら鍵かけて。パジャマに着替えて、ベッドで寝てくださいね」
「余計な世話だ。母親か、おまえは」
「今日だけお母さんだと思って言うこと聞いてください」
ドアを閉めると、ちゃんと中から施錠をする音が聞こえた。とりあえず責務は果たした。巧は時計を見て、まだ二十一時であることにほっとした。
「ホント、あんなにお酒弱いなら、絶対飲んじゃ駄目だろ」
鳥居坂署の上階が男子独身寮なので、署に向かって巧は歩く。
「一応、女なんだから隙見せちゃいけないって」
過去、彼女はこうやって誰かに送ってもらったことがあるのだろうか。それとも、ふらふらになりながら自力で帰っただろうか。後者であればいい。そんなことを漠然と考えながら、巧は帰路についた。
(自分の世話をもう少しすればいいのに)
いつも同じようなスーツにひっつめお団子ヘア。ばっちり化粧をすれば、外見を揶揄されるようなことはなくなるはずなのに。
(もったいないんだよな)
そこまで考えて首をぶんぶん振る。なにを考えているんだ。御堂誉が勝負すべきところは容姿ではない。
(でも、家事はすべきだな)
そう思いつつ、ソファでくうくう寝息をたてている誉に声をかけた。
「御堂さん、俺帰ります。鍵締めてくださいね! 防犯! 大事!」
「おう、大事」
誉はのそりと起き上がって、玄関で靴を履く巧のもとへやってきた。どう見ても、まだ酔っているし寝ぼけている。
「俺が出たら鍵かけて。パジャマに着替えて、ベッドで寝てくださいね」
「余計な世話だ。母親か、おまえは」
「今日だけお母さんだと思って言うこと聞いてください」
ドアを閉めると、ちゃんと中から施錠をする音が聞こえた。とりあえず責務は果たした。巧は時計を見て、まだ二十一時であることにほっとした。
「ホント、あんなにお酒弱いなら、絶対飲んじゃ駄目だろ」
鳥居坂署の上階が男子独身寮なので、署に向かって巧は歩く。
「一応、女なんだから隙見せちゃいけないって」
過去、彼女はこうやって誰かに送ってもらったことがあるのだろうか。それとも、ふらふらになりながら自力で帰っただろうか。後者であればいい。そんなことを漠然と考えながら、巧は帰路についた。