そこにふたりの料理が運ばれてきた。誉はすばやく手を合わせ、割箸を割った。相当腹が空いているらしい。
黙々と食事する姿に、口を挟む余地はない。巧はもう一杯ビールをもらい、自分も食事にとりかかる。

「そういえば、階の同期が一課にいると聞いた。私の同期の陣馬と組んでいると」

思いもかけず、誉の口から陣馬遼の名が出て、巧は顔を向けた。詳しく話を聞くチャンスだ。

「はい、親しい同期で大西才太郎といいます。陣馬警部補とコンビを組んで勉強させてもらっているそうです」
「大西……一課時代に見た気がする。ともかく、陣馬の相棒じゃ大変だな」
「え、そうなんですか? でも、その……御堂さんと組んでいた方ですよね」

誉はふっと笑い、さらりと答える。

「私とあいつは、お互いに好き勝手やって邪魔をし合わないからラクだったがな。陣馬はクセがあるぞ。まず、表情から喜怒哀楽が一切読み取れない。あと、自己中心的だ」

あなたに言われちゃあ……と思った巧だったが、もちろんぎゅっと唇を噤んだ。争いの多い一日だった。最後に誉とまで喧嘩したくない。
ふたりとも空腹だったせいか、食事はあっという間に平らげてしまった。

「ご馳走様でした。御堂さん、俺、明日からも頑張ります」

巧は席から立ちあがり頭を下げた。この短い時間で少しではあるが毒気を抜かれたような感覚があった。どんな一日でも、明日は来る。気持ちを切り替えなければ。