「その通りでございます。以後、気を付けます」

へへえとプライドゼロで頭を下げる巧に冷たすぎる一瞥をくれ、御堂誉はひらりとベッドから飛び降りた。小柄な上司が軽快に動いていると小学生みたいに見えた。口が裂けても言えないことだが。
玄関でローヒールのパンプスを引っ掛ける御堂誉は、パンプスと同じチャコールグレーの地味なパンツスーツをまとっている。いつものスタイルだ。こちらを振り返って圧力満点の視線をくれる。

「五分で出社準備を整え、七分後にはオフィスに姿を見せろ」
「はい!」
「それと、相当楽しい夢を見ていたようだな」
「え?」

驚いて顔を上げる巧に、上司はにいっと笑って見せた。それは優しい女性的な笑顔とは百八十度違う酷薄とした悪魔の笑みだ。

「夢は捜査一課か。……覚えておこう」

巧は背筋に冷たい汗が流れ落ちるのを感じた。
どうやら、最強に格好いい夢の内容は、寝言で筒抜けだったらしい。
狭い玄関から出て行く御堂誉の背を見送り、巧はへなへなとベッドに崩れ落ち、うつ伏せに突っ伏した。

「恥ずかしすぎて死ねる……」

落ち込んでいる暇などないことに、巧が気付くのは数秒後。