午後、巧は誉について刑事課にも顔を出してみた。刑事課はオフィスに居残る人員が少なく、夕方にようやく知能犯係の足柄(あしがら)という刑事と話ができた。

「それって、俺らが時間割くこと?」

三十代後半のこの刑事は馬鹿にしたような態度で言った。生安の卯木ほど感情的ではないが、見くびっているのが丸わかりだ。この男も渡したリストは見ていない。

「飽くまで疑いの段階でしょ。それで捜査できないんだよねえ。そのホシ、今回は窃チャだし、親含めて厳重注意受けて終わりで妥当じゃない? そこを俺たちが今更引っ張れないでしょ」
「特殊詐欺のグループとして捜査を始める機会だとは思いませんか?」
「それは御堂の判断することじゃないよね。とりあえず、こっちでもらうから、もう何もしないでくんない?」
「ですが」
「もう一課じゃないんだしさぁ」

巧にもわかる。このまま知能犯係に渡してしまえば、この案件は手付かずのまま終わる。
色々考えたが、巧は口を挟むことにした。気の短い上司が言葉のパワーで相手をボコボコにしないうちに。

「あの! 鳥居坂の防犯協会の方々に多少なりとも報告をしたいんです。不安がってらっしゃるので」