こうして、マンションに出入りする少年たちのリストは完成した。
すべての人員の把握のため、十日間は午後の張り込みを実施し、少年たちの顔ぶれに変化がないか、シフト制がないかなどを確認した。
確定したリストは生活安全課少年係と、刑事課知能犯係に渡した。
どちらからも『犯抑が余計なことすんな』『暇人め』等々の嫌な言葉と視線をもらったが、巧としては大満足だった。
やっと、刑事らしいことをできた。
捜査権限のない犯罪抑止係でも、有意義な仕事ができたじゃないか。鳥居坂署の廊下を歩く足取りも軽い。
これで特殊詐欺グループ逮捕に繋がれば、犯罪抑止係の功績は隠ぺいしようがないだろう。
誉の株が上がれば、巧ら部下の株も上がる。署内での地位向上だ。もうお荷物なんて言わせない。
一方、巧の横を歩く誉は浮かない顔をしていた。
「御堂さん? どうかしましたか?」
「リストのことだ」
誉は廊下の正面に視線をやり、こちらを見ない。巧に説明するというよりは、ひとりごとのように言う。
「近隣の公立高校の学生がほとんどだが、ひとりだけ帝旺学院(ていおうがくいん)の生徒がいた」
「帝旺学院高校ですか? あの超超超名門の?」
帝旺学院は東大合格率トップの国内最高峰の高校だ。所在地は元麻布で鳥居坂署管内である。
「言われてみれば、最初に見かけた子の制服、帝旺学院だったような……」
巧が思いだすように天井を見上げる隣で、誉は首を振り言った。
「まあ、いい。私たちの仕事は現時点ここまでだ」
そのどこか不安を残した言い方が気になったものの、この時点の巧にはひと仕事を終えた清々しさの方が勝っていた。
すべての人員の把握のため、十日間は午後の張り込みを実施し、少年たちの顔ぶれに変化がないか、シフト制がないかなどを確認した。
確定したリストは生活安全課少年係と、刑事課知能犯係に渡した。
どちらからも『犯抑が余計なことすんな』『暇人め』等々の嫌な言葉と視線をもらったが、巧としては大満足だった。
やっと、刑事らしいことをできた。
捜査権限のない犯罪抑止係でも、有意義な仕事ができたじゃないか。鳥居坂署の廊下を歩く足取りも軽い。
これで特殊詐欺グループ逮捕に繋がれば、犯罪抑止係の功績は隠ぺいしようがないだろう。
誉の株が上がれば、巧ら部下の株も上がる。署内での地位向上だ。もうお荷物なんて言わせない。
一方、巧の横を歩く誉は浮かない顔をしていた。
「御堂さん? どうかしましたか?」
「リストのことだ」
誉は廊下の正面に視線をやり、こちらを見ない。巧に説明するというよりは、ひとりごとのように言う。
「近隣の公立高校の学生がほとんどだが、ひとりだけ帝旺学院(ていおうがくいん)の生徒がいた」
「帝旺学院高校ですか? あの超超超名門の?」
帝旺学院は東大合格率トップの国内最高峰の高校だ。所在地は元麻布で鳥居坂署管内である。
「言われてみれば、最初に見かけた子の制服、帝旺学院だったような……」
巧が思いだすように天井を見上げる隣で、誉は首を振り言った。
「まあ、いい。私たちの仕事は現時点ここまでだ」
そのどこか不安を残した言い方が気になったものの、この時点の巧にはひと仕事を終えた清々しさの方が勝っていた。