「でも、待ってください、御堂さん。俺たちの仕事はあくまで防止策ですよね」

巧は確認するように言う。犯罪抑止係は捜査をしない。特殊詐欺がいざ発生してしまえば、捜査をするのは鳥居坂署刑事課の知能犯係になる。犯罪抑止係の仕事はあくまで防犯を呼びかけるだけなのだ。

「疑わしいという段階では、知能犯係も捜査できない。これが警察システムの安全さであり、融通の利かないところだな」

誉が肩をすくめて、嘆息する。

「だから、私たちで動く。なに、集まっている少年たちの身元を確認し、リストを作っておくだけだ。門外秘のリストで証拠としては扱えないが、生安の少年係と、刑事の知能犯係には流してやってもいい。知能犯の連中が真面目に捜査するなら、特殊詐欺グループがひとつ検挙できるかもしれないな」

なるほどと巧は納得した。
誉の言動行動がおおいに気に入らない刑事たちに、恩を売っておくのが今回の仕事の意味らしい。
俄然やる気がでてきた。いつも不当に馬鹿にされている犯罪抑止係が一目をおかれるなら嬉しいことだ。

「御堂さん! 俺、頑張ります! 刑事課のやつらをあっと言わせてやりましょう!」
「事件性がなかった場合は、また遊んでいると揶揄されるがな」