鳥居坂署に戻り、地下の駐車場でパトカーを降りた。エントランスに上がってくると、ちょうど捜査課の刑事たちが昼食を買いにいくところに遭遇する。

「おう、御堂。また使えなさそうなのを連れてるな」

三十代、四十代と思しき刑事たちが誉に声をかける。小柄な女性を囲んで揶揄する姿は、ちょっとしたいじめの光景にも見える。巧は背を丸め、誉の後ろで目立たぬようにしていた。

「おまえが次から次へとパワハラで辞めさせるから、犯抑はいつでも人手不足だそうじゃねえか」
「ま、それほど仕事ないからいいんじゃないか? 犯抑だし」
「ATMでの立ち番に地域から人を借りてるそうだぜ。たいして働いてないのに偉そうで困るって地域の課長が言ってるぞ」
「どうでもいい仕事に時間をかけるなよ、良い子にしてろ」

ゲラゲラ下品に笑う刑事たち。
小さくなっていた巧も、さすがにムカムカとしてくる。
警察組織は縦社会。どれほど腹が立っても先輩はたてなければならないし、馬鹿にされたとて笑って返さなければならないことも多くある。しかし、若い女性を囲んでこの物言いはどうなのだろう。