翌日、正式に御堂誉は副署長から呼ばれた。なんでも厳重注意のためらしい。普段は滅多に出てこないが、犯罪抑止係は一応副署長直轄の組織である。

「風当たり強いですよね。御堂さんに」
「御堂係長、トラブルメーカーで有名だからね。まあ、形式上でしょ」

本日アポ電強盗用の企画書を作っている巧は呟き、向かいの席で井草はお菓子を食べている。古嶋はうつむきがちに、誉から指示された警務課への提出書類を作成している。
今日もいつも通りの犯罪抑止係。これが普通なのだ。あの数週間が少し異常だっただけ。最初で最後かもしれないけれど、いい経験をさせてもらった。御堂誉という元捜査一課刑事の捜査を間近で見られた時間は特別なものだ。
いつか、本当にいつか、自分が刑事部に呼んでもらえる日がきたら、この経験は役立てることができるかもしれない。
そんな日は夢のまた夢くらい遠いだろうけれど。

「階、ちょっといい?」

ひょこっとオフィスに顔を出したのは、生活安全課の諸岡課長だ。

「はい!」

巧は立ち上がり、諸岡の手招きに従ってオフィスの外へ出た。エントランスに下り、鳥居坂署から出る諸岡について、巧は歩く。

「コンビニのアイスラテが美味しくてね。飲みに行こうよ」
「あ、はい」
「最近はコンビニでもちょっと本格的なコーヒーが飲めていいよね。便利になったよねえ」

諸岡は巧の分もコーヒーを買ってくれ、コンビニ前のガードレールに寄りかかった。