「ところで御堂さん、昼飯どうします? 牛丼特盛かカツカレーですか? 昨日は中華の“向来(こうらい)”でチャーシューメン大盛でしたけど」
「今日は天丼が食べたい。エビが三本とかき揚げが載ったヤツだ」
「相変わらずがっつりですね」

誉は小柄で華奢な体型の割によく食べる。
そうだ。少なくとも、御堂誉の食事の好みはわかったし、食べたいものを予測して提案できる。仕事的にはなんの役にも立たないことではあるが、上司と部下のコミュニケーションは良好、信頼関係は前進しているに違いない。
誉が遠い目をしつつ、冷たく言う。

「生きていると腹が減る。今日は、朝から部下の遅刻でエネルギーを使ったからな」
「す、すみません。戻ったら買いに行きます」
「エビは三本だぞ。間違えるなよ」
「はい!」

やはり、信頼関係もコミュニケーションも前進しているとは言い難いようだ。