先週、鳥居坂署管内で起こった特殊詐欺と高校生殺人事件は、主犯の少年・幸井雪緒の逮捕で幕を閉じた。自宅からは証拠のPCと被害者のカード類が見つかり、自供の信憑性も高く、幸井雪緒は逮捕起訴された。被害者の香西永太も、特殊詐欺の主犯として被疑者死亡のまま送検されている。
本件のスピード解決により、捜査一課では責任者の村中警部をはじめ、担当捜査官は皆おおいに評価された。鳥居坂署も未成年特殊詐欺グループ検挙、Crackz代表・梶本を風営法違反で在宅起訴と功績は大きかった。クラブ・サラスバティは一部で従業員による接待が行われていたそうで、立ち入り検査時にこのことが判明した。この先、詐欺グループからの金銭の授受についても調べが進む予定だ。
しかし、本件の功労者である犯罪抑止係は、徹底的に責められた。一課からは捜査妨害とそしりを受け、村中警部は犯罪抑止係のオフィスで小一時間怒鳴り散らしてから本庁に撤収していった。本庁刑事部からは正式に鳥居坂署に苦情申し立てがきた。捜査を混乱させたという理由で。
鳥居坂署刑事課の面々も生活安全課の面々も、裏で動いていた誉と巧には怒り心頭といった様子で、呼び出されて事情聴取をされることそれぞれ数回。『犯罪抑止係が事件を解決した』ではなく『犯罪抑止係が出しゃばって捜査妨害をした』という不名誉な噂が鳥居坂署内を駆け巡り、あれから一週間以上経つが犯罪抑止係は針の筵(むしろ)状態だ。片脚を突っ込んでいた井草と古嶋も同様なのだが、彼らはあまり人目を気にしないので『勘弁してよ~』という井草の文句程度で済んだ。