「だから、殺したんですか?」
「そうです。ふたりで始めた遊びを、俺たちだけのものにできなくなったから。永太が勝手を始めたから」
「嫌だったら、雪緒くんは降りればよかったじゃないか!」

巧が強い口調で問い詰める。

「きみたちは対等の親友だったんだろう? それなら、もう付き合いきれないって言えばよかったんだ!」
「降りたかったけど、脅されたから殺した、そう言えば、罪が軽くなりますかね」

雪緒は顔を歪めて笑った。とても十六歳の少年のできる表情ではない。諦めと憎しみ、そしてどうしようもなく切ない顔をしていた。

「ふふ、そんなこと言いませんよ。結局俺は永太がムカついたから殺したんです。殺す以外選択肢がないほど、ムカついてたんです。昔っから我儘で偉そうなヤツでした。さすがに俺も我慢の限界だったってことじゃないですか?」

嘲るように笑い飛ばす雪緒に、誉が一歩近づいた。小柄な彼女は下から雪緒を見上げる格好だが、その視線は相手を制するに余りある迫力があった。

「きみは自分のしたことを理解はしていても後悔はしていなさそうだ」
「そうかもしれませんね」
「では、きみが一番認めたくない真実をお伝えしましょう。きみが彼を殺した理由は、ただひとつ。〝香西永太が構築した新たな人間関係への嫉妬〟です」
「は?」

雪緒が目を見開き、口の端を引きつらせて嘲笑を作る。しかし、上手な笑みにはなっていない。