「……永太と俺、まあ本当に仲がよかったんだと思います」

しばしの無言の後、雪緒は無表情のままぽつりと呟いた。

「ずっと一緒だったし、競ってきた。永太がおもしろいことをやろうって、オレオレ詐欺の計画を立て始めたとき、楽しそうだって思いました。俺は自信もありました。ふたりならうまくやってのけられるって。自分たちの手は汚さずに金が入ってくるシステムが作れるって。実際できたら、ものすごい達成感でした。充実感っていうのかな。ふたりでハイタッチして喜びました」

賢い彼らには悪事を止める自制心を持つことより、自身の能力を試す方が価値のあることだったのだろう。すべてがうまくいってしまったことが、転落の始まりだったのだ。

「だけど、永太は調子に乗り始めた。分け前は公平に分配してたけど、あいつは資金提供分多く欲しいって言いだして。なにに金を使ってるのか問い詰めたら、麻布のCrackzの仲間になりたいって。金を多く入れれば、幹部になれるからって言うんです。どっちみち、俺たちの商売が大きくなれば、麻布を仕切ってる連中がみかじめ料を要求してくるんだろうなとは思っていたので、俺たちを守ってくれるなら、多少の金は仕方ないと思ってました」
「後ろ盾にCrackzを選んだことには了承していたんですね」
「仕方ないでしょう。永太が勝手に決めてきたんだから。だけど、あいつはCrackzに入れ込んでいました。ふたりでCrackzの幹部を目指そうって言うんです。馬鹿でしょ、あいつ。俺たちみたいなガキ、搾り取られるだけ搾られてポイですよ。それなのに、どんどん金納めて仲良くなっていけば、麻布のトップになれると思ってたんですよ」

誉が立ち上がった。鋭い視線で、雪緒を射貫く。