「香西くんの財布からクレジットカードとともに学生カードがなくなっていました。帝旺学院は二十四時間、学生カードがあれば校内の一部に入れます。別館にある自習室や図書館だけですが。日中はカードを使わなくても出入りできるので、なくなってもすぐには気づかない。きみは事前に香西くんのカードを盗み出し、防犯カメラを避けるため犯行の前後、学校敷地内を通り抜けたんです」
「現金やクレジットカードが盗み出されていたのはカモフラージュだった……」

巧の言葉に誉が頷く。

「香西くんのカードがこの日の深夜に東門と西門でそれぞれ使われた履歴が残っていました。香西くん本人はコンビニ前の防犯カメラに映っていたので、このカードを使っていないことは明らかです。残念ながら学内の防犯カメラは死角が多く、カードを使用した人物の姿は確認できませんでしたが」

雪緒は泰然としている。

「イコール俺が犯人ではないということですね。学生カードを盗み出せば、誰でもできたことじゃないですか」

自信があるのだ。ここまでは見破られても、自分が犯人だと特定されないという確固たる自負が。

「それでは、きみしか知り得ないことをお話ししましょう」

誉はにっこりと微笑み返した。挑発的にも響く声音である。