「きみは少し前から香西永太くんを殺害しようと計画してきました。私たちが振り込め詐欺について嗅ぎ回っていると知った上で計画を実行したばかりか、ミスリードしようとしてきた。すごい度胸と自信です」

雪緒は短く嘆息し、細めた目で誉を見つめた。

「それ、褒めてないですよね。俺はあの日家から出ていません。さっきから御堂刑事は防犯カメラの話をしていますから、当然俺の家周辺のカメラは調べたんでしょう?」
「ええ、きみの姿は映っていませんでした。きみは自宅から現場までの間、防犯カメラが設置されていない、死角になるルートを事前に確認していましたね」
「証拠はないんですよね」
「ええ、推測です」

誉は素直に答える。

「実際、あの日の犯行時刻、有栖山記念公園周辺に数人の通行人がいました。その通行人たちの方がきみより犯人に近いかもしれません。その人たちに動機がなく、すでに身元が割れていてもね。だからこそ、動機のあるきみにも犯行ができるということは立証しておかなければ、幸井くん」

もったいつけた言い方をするのは、雪緒の焦りを引き出したいのだろうか。誉は落ち着いた口調で続ける。

「有栖山記念公園周辺には、四方に防犯カメラが設置されています。公共施設やコンビニのカメラですが、どのルートを通っても映るようになっています。……ただひとつ、帝旺学院高校内を通れば話は別です」

雪緒がぴくりと肩を震わせ、きつい表情をいっそう剣呑にする。苛立たせたいという意味合いでは、誉の作戦は成功しているように見える。