「きみが定期的にあのマンションに行かなければならなかった理由は、少年たちがパソコンにまとめたデータのバックアップを取るためだろう? 彼らは技術的にはパソコンに明るくない。メンテナンスやバックアップのためにきみは定期的にあのマンションに行かなければならなかったんだよね。無人のときに」

巧の声音は優しい。その口調にはまだ信じたくない、認めるなら素直に認めてほしいという気持ちが滲んでしまう。

「実行犯の少年たちへの振り込みはネットバンクを利用していたんですね。ですが、彼らのバイト料は最初のひと月だけ、ネットバンクではなく香西永太の銀行カードを使ってなされていました。相手の通帳に表示される名義は手動で代えられますし、のちのちネットバンクの名義を同じにすれば、振り込まれた方は気づかない。ネットバンクの開設年月日と少年たちのバイト料を受け取り始めた時期がずれていたので調べたんです。資金と知識はあってもきみたちは未成年、最初のひと月はネットバンクの開設が間に合いませんでしたか? バイト代を彼らに手動で振り込んでいたのはきみですね」
「証拠がないです。永太かもしれないじゃないですか」
「いえ、あります」

誉はスマホを取り出し、画面を見せる。荒い画像ながらも、ひとりの少年がATMを操作しているのが見てとれる。中学の制服を着たその姿は幸井雪緒だった。