「そうですね。彼が本当に〝自衛用のナイフを奪われて殺害された〟のだとしたら」

誉は答え、それから雪緒を優しい瞳で見つめる。

「ところで幸井くん、私はひとつどうしても気になっていることがあるんです」
「なんでしょう」
「私は最初にきみと出会ったとき、あのマンションに出入りする少年たちの名簿を作り終えていました。防犯カメラのないマンションなので、近隣の住宅に設置させてもらいました。ちょっと大変でしたがね。リストには、カメラに映っていたきみの名前もあります。しかし、少年たちの誰もがきみの顔を見たことがないと言っていました。帝旺学院生がメンバーにいるということすら知らなかった。ですが、きみは最初に帝旺学院の制服で訪れていますね」
「ああ、永太に呼ばれて二度ほど顔を出しましたが、すぐに帰っているのでそこにいた人たちが覚えていなくても無理はないかもしれないです」
「そこがそもそもおかしいんです。きみがあのマンションを訪れたとき、室内には誰もいなかったんですから」

雪緒が黙った。誉は続ける。

「きみはあの日、誰もいない部屋に行き、すぐに帰っています。それは防犯カメラで確認できます。このとき、きみはまだ防犯カメラの存在に気づいていなかったのですね。きみは実行犯の少年たちのメンバーではないが、定期的にあの部屋に行く用事があった。防犯カメラに気づいたのは二度目の訪問です。このとき、防犯カメラと特殊詐欺警戒チラシ、そして私と階の姿を見つけ、探りを入れようと近づいた。そして意図的に、私たちに情報を開示した」