「あはは、理由にはしたくないですけど、今回はボロボロかもしれないです」
「中学時代は常にトップ、帝旺学院の入試もかなりの好成績で入学しているそうじゃないですか。そんなきみが不調なら、嬉しい人間は多いかもしれませんね」
「あ、気に障ったらごめんね。香西永太くんの成績とか調べていて、雪緒くんのも一緒にわかっちゃったんだ。すごく頭よかったんだね。帝旺学院自体、超名門なのに」

巧が誉の言葉をとりなし、雪緒はなんでもないというように首を振った。

「昔は永太と競っていました。勝った方がアイス奢るとか。最近は全然でしたけど」
「そっか、親友でライバルだったんだね。香西永太くんは」

巧の言葉から流れるように誉が口を開いた。

「ときに、幸井くん。知っていましたか?」
「なにをです?」

誉の雰囲気の変化に雪緒は気づいたのかもしれない。わずかに空気が張り詰めるのが巧にもわかった。

「香西くんを死に至らしめた凶器のサバイバルナイフですが、彼はあのナイフを持ち歩く習慣がなかったそうです」
「え? そうなんですか?」
「なんでも、最初はポケットに入れて持ち歩いていたのですが、一度深く指を切ってしまったそうです。それからは恐怖心みたいなものもあって、引き出しに入れっぱなしにして触らなかったはずだと、彼のお兄さんが」

雪緒はわずかに黙り、それから物憂げにため息をついた。

「そんなものを持ち出してまで身を守ろうとしていたなんて、永太はどれほど怖かったんでしょうね」