「こちらは鳥居坂警察署です。振り込め詐欺にご注意ください」
のどかな都心の住宅地をミニパトカーがゆったりと走る。
マイクに向かってアナウンスする巧は、続きの文言を発声しようと息を吸い込む。その瞬間、脇腹に拳がめり込んだ。おふっと妙な呻きがマイクから響き、住宅街を歩く人々がパトカーを一瞬注視した。しかし、すぐに何事もなかったように歩き出す。巧はマイクのスイッチを切り、運転席の誉を睨んだ。
「御堂さん、勘弁してくださいよ!」
「声に張りが無さ過ぎる」
運転席の誉は飽くまで正面を見て安全にパトカーを走らせながら言う。巧のアナウンスが気に入らないらしい。
「もう一度だ。やり直せ」
「わかりました」
巧はマイクに向かい再び発声する。
「振り込め詐欺被害が増えています。鳥居坂署では……うっぐ」
またしても誉の拳が脇腹にめり込み、巧は呻いた。
「ちょ、もおお、やめてくださいよ! 御堂さん! 変な声入っちゃったじゃないですかあ!」
「文面を間違えるな」
「一行読み飛ばしてしまっただけじゃないですか! お腹にごすごす拳当てんのやめてくださいよ!」
「うるさい。今私に文句を言う音量で声を張れ。おまえの声はナヨナヨし過ぎている。迫力を出せ」
冷淡に言われ、巧は唇を噛みしめた。ちゃんとやっているのに、理不尽である。
のどかな都心の住宅地をミニパトカーがゆったりと走る。
マイクに向かってアナウンスする巧は、続きの文言を発声しようと息を吸い込む。その瞬間、脇腹に拳がめり込んだ。おふっと妙な呻きがマイクから響き、住宅街を歩く人々がパトカーを一瞬注視した。しかし、すぐに何事もなかったように歩き出す。巧はマイクのスイッチを切り、運転席の誉を睨んだ。
「御堂さん、勘弁してくださいよ!」
「声に張りが無さ過ぎる」
運転席の誉は飽くまで正面を見て安全にパトカーを走らせながら言う。巧のアナウンスが気に入らないらしい。
「もう一度だ。やり直せ」
「わかりました」
巧はマイクに向かい再び発声する。
「振り込め詐欺被害が増えています。鳥居坂署では……うっぐ」
またしても誉の拳が脇腹にめり込み、巧は呻いた。
「ちょ、もおお、やめてくださいよ! 御堂さん! 変な声入っちゃったじゃないですかあ!」
「文面を間違えるな」
「一行読み飛ばしてしまっただけじゃないですか! お腹にごすごす拳当てんのやめてくださいよ!」
「うるさい。今私に文句を言う音量で声を張れ。おまえの声はナヨナヨし過ぎている。迫力を出せ」
冷淡に言われ、巧は唇を噛みしめた。ちゃんとやっているのに、理不尽である。