「代表の梶本を含め、幹部は被害者・香西永太との交友を認めるでしょうか」

大西の言葉に誉は頷く。

「中途半端にとぼけても仕方ないから言うだろうな。アリバイはもう調べてあるんだろう」

誉の問いに、陣馬が受けて答える。

「昨日の午後と今日の午前中に大西と調べた。被害者の死亡推定時刻、梶本を始めとした幹部数名はクラブの防犯カメラに映っている。他の幹部は現在捜査中だが、今日中にはわかると思う。なお、犯行現場周辺の防犯カメラに映った車両の特定を進めているが、Crackzのメンバーが所有している車はなかった」
「深夜の住宅地なので通行車両はさほど多くありません。これも近々に完全特定できるかと思います」

大西が追加して答え、誉が依頼を足す。

「陣馬、大西、ついでに麻布昇鯉会の関係者所有の車がないかも調べてもらえるか。念のためだが」

次に誉は諸岡課長の方を見る。

「昇鯉会の関係者データは組織犯罪対策課で持ってますよね」
「御堂、私に組対からデータを取ってこさせる気だね」
「私では、手に入れられそうにないですから」

抜け抜けと言い、上司を使う気満々である。

「昨夜の潜入で昇鯉会の名前が出たか?」

陣馬が尋ねる。その口調から、陣馬も誉の潜入捜査を知っていた様子だ。

「本人たちの話では、Crackzの連中が組織だって香西永太を始末したという線はなさそうだ。怨恨の話は聞こえてこなかったが、隠していればわからない。引き続きCrackzのアリバイは確認した方がいいだろうな。昇鯉会には、Crackzが上納金を納めることで麻布界隈のバランスを取っているらしい。被害者は、Crackzから昇鯉会に乗り換えようとして殺された可能性もある」