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翌日昼、犯罪抑止係のオフィスには通常の四人の他に陣馬遼、大西才太郎、そして諸岡課長がそろっていた。
「さて、ここまでの情報をまとめよう。一課の捜査進展はその後どうだ」
まるで会議のように始まったが、この会合は正規のものではない。陣馬と大西は食事のフリをしてこっそり特捜本部を抜けてきているし、昨夜未成年の一斉補導で忙しかった諸岡も犯罪抑止係に来られるほど暇ではないはずだ。なお、席自体足りないので、全員が立った状態である。巧と古嶋が全員分の缶コーヒーを配った。
「一課は、物取りの可能性も捨てていないが、一方で被害者の取り仕切っていた特殊詐欺グループの調査に着手した。金の流れをCrackzと見て、捜査している」
その言葉に巧は顔をあげた。ようやく誉が推察していたところまで一課が追い付いてきている。誉とともにまとめた資料は、刑事たちの本意ではなくとも活用されるだろう。
大西が陣馬の代わりに「はい」と手をあげ、続ける。
「昨夜、鳥居坂署の立ち入りでCrackz幹部を数名任意同行させたそうですが、お陰様で村中警部が動きました。一課も今日の午後に、改めてCrackz幹部を任意で呼び事情聴取予定です」
「一課はプライドが高いからな。所轄の生安が被害者の関係者に事情を聞いたとなれば、別件でも黙っていない」
誉がにやっと微笑みながら言う。目的はこれだったらしい。一課の村中警部は誉の手の上で転がされたことになる。さらに、誉がCrackzの会合に潜入していたことなど知らないだろう。
翌日昼、犯罪抑止係のオフィスには通常の四人の他に陣馬遼、大西才太郎、そして諸岡課長がそろっていた。
「さて、ここまでの情報をまとめよう。一課の捜査進展はその後どうだ」
まるで会議のように始まったが、この会合は正規のものではない。陣馬と大西は食事のフリをしてこっそり特捜本部を抜けてきているし、昨夜未成年の一斉補導で忙しかった諸岡も犯罪抑止係に来られるほど暇ではないはずだ。なお、席自体足りないので、全員が立った状態である。巧と古嶋が全員分の缶コーヒーを配った。
「一課は、物取りの可能性も捨てていないが、一方で被害者の取り仕切っていた特殊詐欺グループの調査に着手した。金の流れをCrackzと見て、捜査している」
その言葉に巧は顔をあげた。ようやく誉が推察していたところまで一課が追い付いてきている。誉とともにまとめた資料は、刑事たちの本意ではなくとも活用されるだろう。
大西が陣馬の代わりに「はい」と手をあげ、続ける。
「昨夜、鳥居坂署の立ち入りでCrackz幹部を数名任意同行させたそうですが、お陰様で村中警部が動きました。一課も今日の午後に、改めてCrackz幹部を任意で呼び事情聴取予定です」
「一課はプライドが高いからな。所轄の生安が被害者の関係者に事情を聞いたとなれば、別件でも黙っていない」
誉がにやっと微笑みながら言う。目的はこれだったらしい。一課の村中警部は誉の手の上で転がされたことになる。さらに、誉がCrackzの会合に潜入していたことなど知らないだろう。