立ち上がった誉の姿を見て、巧はぎょっとした。誉はあられもないほど肌を露出したドレスを着ている。いや、肩口などは明らかに他人の手によって乱された様子が見て取れる。
判断に迷う余裕もなく、巧は自身のジャケットをばさりと誉に被せ、その小さな身体を抱き上げた。
「おい!」
「ちょっと我慢してください! 脱出しますから!」
横抱きに誉を抱え、再び騒乱の中、女子たちをかき分け進んだ。裏口で捜査員とCrackz幹部が怒鳴り合う声が聞こえる。
「おい! てめえ! どさくさに紛れて女さらおうとしてんじゃねえよ!」
いきなり肩を掴まれた。ひとりの若い男がすごい形相で巧を睨んでいる。先ほど、立ち入り検査を知らせにVIPルームに走っていった男だ。Crackzの下っ端だろう。
「離せよ!」
「てめ、どこの野郎だ! Crackzを敵に回してえのか?」
掴まれた肩を振りほどこうとして果たせない。両手は誉を抱き上げているし廊下は人が溢れ混乱している。フロアから逃げてきた一般客も混じり、めちゃくちゃだ。
「俺の彼女を迎えにきただけなんだ! おまえらには関係ない!」
「知るか! うちで集めた女だろうが、それは!」
掴みかかる男を説得しようとするものの、見逃してくれそうもない。男の手が巧の腕の中の誉に伸びた。
「オラ、クソアマ、てめえも逃げてんじゃねえよ!」
男の手が誉の肩をジャケット越しに掴む。次の瞬間、巧の鋭い横蹴りが男の腹に食い込んでいた。ほぼ反射の領域だった。
人混みの中、男が後方に吹っ飛んで転がる。巻き込まれた一般客や女たちが悲鳴をあげるが、騒乱にまぎれた。
「俺の女に触んじゃねえよ」
巧は低く吐き捨てるように言った。相手は呻くばかりでもう動けそうにない。
判断に迷う余裕もなく、巧は自身のジャケットをばさりと誉に被せ、その小さな身体を抱き上げた。
「おい!」
「ちょっと我慢してください! 脱出しますから!」
横抱きに誉を抱え、再び騒乱の中、女子たちをかき分け進んだ。裏口で捜査員とCrackz幹部が怒鳴り合う声が聞こえる。
「おい! てめえ! どさくさに紛れて女さらおうとしてんじゃねえよ!」
いきなり肩を掴まれた。ひとりの若い男がすごい形相で巧を睨んでいる。先ほど、立ち入り検査を知らせにVIPルームに走っていった男だ。Crackzの下っ端だろう。
「離せよ!」
「てめ、どこの野郎だ! Crackzを敵に回してえのか?」
掴まれた肩を振りほどこうとして果たせない。両手は誉を抱き上げているし廊下は人が溢れ混乱している。フロアから逃げてきた一般客も混じり、めちゃくちゃだ。
「俺の彼女を迎えにきただけなんだ! おまえらには関係ない!」
「知るか! うちで集めた女だろうが、それは!」
掴みかかる男を説得しようとするものの、見逃してくれそうもない。男の手が巧の腕の中の誉に伸びた。
「オラ、クソアマ、てめえも逃げてんじゃねえよ!」
男の手が誉の肩をジャケット越しに掴む。次の瞬間、巧の鋭い横蹴りが男の腹に食い込んでいた。ほぼ反射の領域だった。
人混みの中、男が後方に吹っ飛んで転がる。巻き込まれた一般客や女たちが悲鳴をあげるが、騒乱にまぎれた。
「俺の女に触んじゃねえよ」
巧は低く吐き捨てるように言った。相手は呻くばかりでもう動けそうにない。