誉からの音声は賑やかな飲み会の声だ。男たちの笑う声。女性の大袈裟なくらいはしゃいだ声。
『この子初めて見た』
騒音の中で男の声を拾う。声が近い。
『名前は?』
『ホノカ』
答えた声は誉のものだ。巧は息を飲み拳を握りしめる。ひとりの幹部が誉に目をつけたようだ。
『俺、ちっちゃい女好きなんだよね』
『ヨシキ、ロリコンかよ』
『ちげえよ。背の話。小さい方が締まりがいいんだよ。ホノカ、膝においで』
下品な言葉に、巧はぞわっと総毛だった。そして、御堂誉の大ピンチだ。
どうする、どうやって踏み込む? このままでは誉が乱暴されてしまう。
その時だ。クラブのフロアから悲鳴のような声が聞こえた。ざわっと空気が変わる。
「はい、皆さん。そのまま動かないでねー。音楽止めましょう」
拡声器の冷静な声がクラブの熱狂を一瞬にして覚ました。
「鳥居坂署です。もう一度言います。動かないでね」
「年齢確認できるものを見せてもらいまーす」
一瞬静まり返ったフロアがわっと騒がしくなった。おそらく刑事たちの入店と、逃げ出す連中がもみ合いになっている。
立ち入り検査だ。巧は聞いていない。当然、古嶋もだ。ふたりの前を、若い男が転がるように通り過ぎ、VIPルームに駆けこんでいくのが見えた。
【生安が入った。混乱に乗じて係長を連れ出せ】
井草からのメッセージ。おそらく、生活安全課の少年係が動いている。
「未成年補導の名目で立ち入りだ」
誉が井草に『諸岡課長の指示で動け』と言っていたのはこういうことだったのだ。幹部会の場所と時間がわかった時点で、生安を動かすように誉が指示していたに違いない。
『この子初めて見た』
騒音の中で男の声を拾う。声が近い。
『名前は?』
『ホノカ』
答えた声は誉のものだ。巧は息を飲み拳を握りしめる。ひとりの幹部が誉に目をつけたようだ。
『俺、ちっちゃい女好きなんだよね』
『ヨシキ、ロリコンかよ』
『ちげえよ。背の話。小さい方が締まりがいいんだよ。ホノカ、膝においで』
下品な言葉に、巧はぞわっと総毛だった。そして、御堂誉の大ピンチだ。
どうする、どうやって踏み込む? このままでは誉が乱暴されてしまう。
その時だ。クラブのフロアから悲鳴のような声が聞こえた。ざわっと空気が変わる。
「はい、皆さん。そのまま動かないでねー。音楽止めましょう」
拡声器の冷静な声がクラブの熱狂を一瞬にして覚ました。
「鳥居坂署です。もう一度言います。動かないでね」
「年齢確認できるものを見せてもらいまーす」
一瞬静まり返ったフロアがわっと騒がしくなった。おそらく刑事たちの入店と、逃げ出す連中がもみ合いになっている。
立ち入り検査だ。巧は聞いていない。当然、古嶋もだ。ふたりの前を、若い男が転がるように通り過ぎ、VIPルームに駆けこんでいくのが見えた。
【生安が入った。混乱に乗じて係長を連れ出せ】
井草からのメッセージ。おそらく、生活安全課の少年係が動いている。
「未成年補導の名目で立ち入りだ」
誉が井草に『諸岡課長の指示で動け』と言っていたのはこういうことだったのだ。幹部会の場所と時間がわかった時点で、生安を動かすように誉が指示していたに違いない。