「中はどこかで繋がってますよね。行きます! そうだ、俺と古嶋で。若者二人組が酔って迷い込んだ体で近づきます!」

いきなり話を振られて古嶋が肩を揺らした。青ざめた顔からさらに血の気が引いて行く。唇がぶるぶる震えている。

「階さん……俺、そういうの……無理で」
「いや、大丈夫だ! 古嶋、おまえならできる! なにしろ、二十歳という若さ! 背も高いし、前髪で顔を隠した感じもミステリアス! クラブに馴染む! 安心しろ!」

巧は古嶋を離すまいと横に並びがっちり腕を組んだ。ともかく、誉をひとりで行かせられない。

「わかった。階と古嶋は中へ。井草巡査部長は外でVIP用の裏口を張り、階たちと連絡を取り合ってくれ。なにかあれば、諸岡課長の判断を仰ぐんだ」
「ん? 諸岡課長も動いてるんですか?」
「じきにわかる。私たち犯抑には関係ないことさ」

誉は平気そうに言って、腕時計を見た。作戦開始まであと数時間である。