「最初のクラブ探訪のあと、何度かひとりで行ってみた」

また勝手に……はたしてどんな格好をしていったのだろう。そんなことまで不安になる巧だ。

「そこで声をかけられた。『金に困っているならいいバイトがある。座ってるだけでいいし、Crackzのメンバーと仲良くなれる』とな」

誉はなんでもないことのように説明するが、おそらく誘われるように自分からアピールしたに違いない。巧は頭を抱えたくなった。陣馬から言われたばかりだが、早速誉が独断で動いている。止める暇もなかった。

「そこでおまえたち三人には外で待機してほしい。出口を固めてなにかあれば援護を頼む。極端な話、中でドンパチ始まったとか、私の正体がバレて拉致されたとかな」
「いやいやいや、御堂係長勘弁して~。俺たち業務外ですからぁ~」

働かない主義の井草が頭を抱えて悲しい抗議の声をあげる。業務は定時後確定であり、犯罪抑止係は絶対にやらない仕事だ。古嶋もとんでもないことになったと青ざめている。
巧は大慌てで進言した。

「あ、あの! 御堂さん、俺も中に入ります! 普通の客として!」
「VIPルームまでは来られないぞ。今回の場所はCrackzお抱えのクラブだが、VIPルームは一般客と入り口から違う」