陣馬と別れて犯罪抑止係のオフィスに入ると、事態を即座に理解した誉にこれまた秒速で罵られた。
「潜入し損ねたとは、使えないヤツめ。口八丁手八丁で、乗り込み居座り、情報をすべて私に流すのがおまえの仕事だろう。この馬鹿が」
(御堂さんのせいですけど。御堂さんが上司じゃなければ、追い出されませんでしたけど)
あんまりな言い様にも言い返せずに頭を下げると、向かいのデスクから井草が不満げな声をあげる。
「特捜本部に潜入とか、もうどうでもいいでしょ。陣馬警部補がいるんだから。そんなことより階、止めて~。御堂係長、またクラブに行くって言ってるんだよ」
驚いて見やると、誉は頷く。
「おまえたちは周辺の偵察を頼む。情報では、今夜、Crackzが会合をするそうだ。おそらく、香西永太の死を受けてだ。重要な内容が話し合われるだろうな」
「……服はいらないですか?」
古嶋が尋ね、誉は頷いた。
「私の衣装と、中に入る手筈は整っている」
「ど、どういうことですか? 御堂さんだけ中に入るんですか?」
慌てて尋ねると、どこかドヤ顔で誉が頷いた。
「Crackzの下の連中が女を集めていると聞いてな。立候補してきた」
組織下部のホストやチンピラは、こうした裏社会のVIPの会合に、キャバ嬢やその手の女子を集めることがある。しかし、誉はいつの間に潜入の段取りを整えていたのか。簡単に立候補できるわけもない。