「ああ、そうだ。警察学校の教場で会ったときから、御堂はあの通りだ。何ひとつブレていない」
それはつまり、警察組織にいることで彼女が変化したのではなく、元々の彼女の性格がああいう質なのだろうか。そしてそれは生きづらくはないのだろうか。
陣馬は静かに語る。
「階も痛感していると思うが、御堂は周囲との軋轢が絶えない。そのために今日のおまえのように迷惑をこうむることもあるだろう。許してやってくれとは言わないし、ヤツの理解者になれとも言わない。土台無理だ。常人が病的な仕事馬鹿の脳を理解しようというのは」
病的な仕事馬鹿、言い得て妙である。
御堂誉は刑事の基本に忠実であり、それをどこまでもひとりで完遂しようとする。巧とてふた月以上組んでいれば、いやこの特殊詐欺を追い出してからは余計にわかる。御堂誉はたったひとりで執念深く事件を追う。
警察組織ではつま弾きにされるほどの能力と性格なのに、誰より警察官なのだ。
そこでふと巧は思う。
御堂誉はもともとあの性格なのだと今しがた推察したばかりだけれど、どこかであの性格にシフトしたのではないだろうか。“警察官になるために”。
余分なものを排除し、自身のやり方に徹する姿は、ただの頭のいい人間ではない。捜査をするための機械のようだ。あの精神を、常人が生まれながらに持ち合わせているとは考えにくい。
陣馬が巧を見た。
「御堂はたまに危ない。自己保全の意識が低いせいか、利になると思った瞬間動いているときがある。目的と手段が合致すれば、自分自身が二の次になるんだ。そのあたりは見ていてやってほしい、部下として」
それはつまり、警察組織にいることで彼女が変化したのではなく、元々の彼女の性格がああいう質なのだろうか。そしてそれは生きづらくはないのだろうか。
陣馬は静かに語る。
「階も痛感していると思うが、御堂は周囲との軋轢が絶えない。そのために今日のおまえのように迷惑をこうむることもあるだろう。許してやってくれとは言わないし、ヤツの理解者になれとも言わない。土台無理だ。常人が病的な仕事馬鹿の脳を理解しようというのは」
病的な仕事馬鹿、言い得て妙である。
御堂誉は刑事の基本に忠実であり、それをどこまでもひとりで完遂しようとする。巧とてふた月以上組んでいれば、いやこの特殊詐欺を追い出してからは余計にわかる。御堂誉はたったひとりで執念深く事件を追う。
警察組織ではつま弾きにされるほどの能力と性格なのに、誰より警察官なのだ。
そこでふと巧は思う。
御堂誉はもともとあの性格なのだと今しがた推察したばかりだけれど、どこかであの性格にシフトしたのではないだろうか。“警察官になるために”。
余分なものを排除し、自身のやり方に徹する姿は、ただの頭のいい人間ではない。捜査をするための機械のようだ。あの精神を、常人が生まれながらに持ち合わせているとは考えにくい。
陣馬が巧を見た。
「御堂はたまに危ない。自己保全の意識が低いせいか、利になると思った瞬間動いているときがある。目的と手段が合致すれば、自分自身が二の次になるんだ。そのあたりは見ていてやってほしい、部下として」