「甘い……」

自分の缶コーヒーをひと口飲み陣馬が呟いた。巧は少し笑って言う。

「微糖ですから」
「ブラックを買ったつもりだった」

どう見ても缶のデザインが違うのに、どうして間違えたのだろう。陣馬は心底不思議そうな顔で自身の缶を眺めている。もしかして捜査一課のエースは少々天然なのだろうか。誉曰く表情から喜怒哀楽が読み取れないとのことだが、言葉通りにクールで無味乾燥な感じはしない。
巧は同じ微糖のコーヒーを口に含みつつ、陣馬の意外な一面を横目でちらちら盗み見る。

「階といったな。すまなかった」

いきなり謝られて、巧は慌てて背筋をのばした。

「いえ、とんでもないです」
「すべては御堂に敵が多過ぎるのが悪いんだが」

少し考え尋ねた。今なら聞けるかもしれない。

「陣馬警部補は、御堂さんとコンビを組んでいたんですよね」
「厳密にコンビやパートナーということはない。指導する側、される側が対になることは多いが、俺たちは同期だ。たまたま仕事のペースが似ていたから、ともに捜査していて邪魔にならなかった。それだけだ」

陣馬は淡々となんの感情も込めずに答える。誉も似たようなことを言っていた。

「御堂さんは……その、ずっとあんな感じなんですか。……ええと、ストロングスタイルっていうか周りにぶつかっていくというか……」