オフィスに戻ると、ちょうど陣馬と大西がやってくるところに遭遇した。

「階、お疲れっ」

大西が笑顔で声をかけてくる。今日も元気いっぱいの明るい表情だ。若手ながら特捜本部に抜擢され、気力充実、意気揚々といったところだろうか。

「おお、大西お疲れ。そっちはどうだ」

今度は陣馬の空気に飲まれないよう、しゃきっと背筋を伸ばす巧である。

「その話をしに来たんだよ。俺と陣馬さんがこっちに出入りしてるって知られたら、村中警部の雷が落ちるけどな。俺ら外されちゃう」
「そういうことだ。他言は慎んでくれ」

大西の横で陣馬が言った。その凛々しさには飲まれないぞと巧は拳を握る。御堂誉の部下で相棒は、現在階巧なのだ。

「御堂、Crackzの情報があるか?」

オフィスに入りながら陣馬が尋ね、誉は自身のデスクに戻るなり、印刷した資料を放って渡した。同期ならではなのか、だいぶ雑な態度だ。

「これだ。幹部の顔写真と経歴」

以前誉がまとめた資料である。手にした陣馬はぺらぺらとめくり、呟いた。

「詳細だな。組織犯罪対策課に行かないとないかと思っていた」
「むしろ、組対(そたい)は調べ上げていないかもしれない。麻布の暴力団の情報なら組対だが、Crackzは悪ガキどもの成れの果てだ」
「やはり、おまえが特捜本部にいた方が話が早い」

陣馬がしみじみ言う。巧は心の中で頷いた。確かに御堂誉に任せた方が事件解決は早いだろう。