「ネットバンクやSNSを上手く利用し、高校生にバイト感覚で犯罪をさせる。システムとしては、うまく回っているよ」
「十六歳が主犯の犯罪とは思いたくないですね」
「十六歳ならではの穴もあるさ。このまとめ役のアカウントは照会をかけられる。出てくるのは香西永太だろうが、拠点マンションの件と合わせて一応有力な証拠だ」
逮捕起訴を目算に入れれば、証拠集めは大事なことである。今までは状況証拠や、署内のみで回せる門外秘資料ばかりだった。揃えるものを揃えて送致しないと、検察は起訴してくれない。誉がいよいよ、詐欺グループ検挙に向けて動き出したことになる。
「あの少年たちがどうなるかは一課の捜査進展具合に寄るが、どっちみちただでは済まない。罪と罰の論理をわかってもらおう」
「……ですが、彼らの中に香西永太を殺した人間がいるとは考えづらいです」
巧は自分の感じたことを口にする。バイトをしていた少年たちは罪の意識こそ薄いが、殺人を犯すような強い感情も感じられなかった。
「そうだな。全員がそこそこ満足していたし、誰ひとりトップの顔も名前も知らず、気にしてもいなかった。ひとりでもトップと接見していたり、内部でもめごとがあれば、証言が出ただろう」
答え合わせのように頷く誉を見つめ、巧は思う。案外、この人の中ではもう事件の概要は組み立て終わっているのではなかろうか。今やっていることはすべて、確実に犯人を追い詰め、起訴まで持ち込める地固めに思える。
「さて、一度署に戻って事務作業だな」
誉は小柄な身体を精一杯上に引き上げ、うんと伸びをする。
なお、犯罪抑止係のデイリーワークである特殊詐欺防止の企画立案は、現在井草と古嶋が担当中だ。さすがにずっとふたりに任せきりというわけにもいかない。
「十六歳が主犯の犯罪とは思いたくないですね」
「十六歳ならではの穴もあるさ。このまとめ役のアカウントは照会をかけられる。出てくるのは香西永太だろうが、拠点マンションの件と合わせて一応有力な証拠だ」
逮捕起訴を目算に入れれば、証拠集めは大事なことである。今までは状況証拠や、署内のみで回せる門外秘資料ばかりだった。揃えるものを揃えて送致しないと、検察は起訴してくれない。誉がいよいよ、詐欺グループ検挙に向けて動き出したことになる。
「あの少年たちがどうなるかは一課の捜査進展具合に寄るが、どっちみちただでは済まない。罪と罰の論理をわかってもらおう」
「……ですが、彼らの中に香西永太を殺した人間がいるとは考えづらいです」
巧は自分の感じたことを口にする。バイトをしていた少年たちは罪の意識こそ薄いが、殺人を犯すような強い感情も感じられなかった。
「そうだな。全員がそこそこ満足していたし、誰ひとりトップの顔も名前も知らず、気にしてもいなかった。ひとりでもトップと接見していたり、内部でもめごとがあれば、証言が出ただろう」
答え合わせのように頷く誉を見つめ、巧は思う。案外、この人の中ではもう事件の概要は組み立て終わっているのではなかろうか。今やっていることはすべて、確実に犯人を追い詰め、起訴まで持ち込める地固めに思える。
「さて、一度署に戻って事務作業だな」
誉は小柄な身体を精一杯上に引き上げ、うんと伸びをする。
なお、犯罪抑止係のデイリーワークである特殊詐欺防止の企画立案は、現在井草と古嶋が担当中だ。さすがにずっとふたりに任せきりというわけにもいかない。