その日の午後、巧は誉とともに振り込め詐欺の実行犯である少年たちに接触した。
少年たちはマンションには集まっておらず、各々自宅や遊び場にいた。振り込め詐欺グループは瓦解状態である。
香西永太がいなくなったのだからそういうものかと思いきや、話を聞いてみると違う。彼らの誰もがトップの死を知らない様子だ。

『SNSの募集で集められた』
『SNSのダイレクトメールで指示が来た。マニュアルももらった』

それが彼らの共通する証言だった。そして、誰もがするすると自身の知っていることを話す。まるで悪びれない態度に、巧が驚いたくらいだ。
近隣の公立校に通っている三年生の男子はこう話した。

「俺が一応現場の取りまとめはしてました。ゲットしてきたカードで金を引き出して、それをネットバンクの指定口座に振り込む。そうすると、二日以内に分け前が各自の口座に入ってる。明細は全員に同じものが送られてきて、メンバーそれぞれの名前と取り分が書かれてる感じ。金額は働きに応じての歩合制だけど、電話かけるだけで普通のバイトよりもらえるから、誰も文句言わなかったなあ」

当初誉が想定していた通り、実行犯グループと首謀者は完全に分離していた。まったく接触がなかったらしく、グループの誰ひとりそのことに深い疑問も持たなかったようだ。