「御堂さん、情報出し過ぎじゃないですか? いくら雪緒くんがガイシャの幼馴染だからって」

少年の姿が完全に見えなくなってから、巧は誉に向き直った。誉は気にする素振りもなく、平静に答える。

「彼は香西永太に近しい人物だった。彼にしかわからないことも多いだろう。そのための注意喚起の意味もある」

雪緒もまたCrackzや少年グループに狙われる恐れがあるということだろうか。それならば、本人への注意喚起だけでなく、幸井雪緒を守らなければならない。振り込め詐欺の観点で言えば、貴重な証人だ。

「あと、気になったんですが、鳥居坂署の知能犯係ってもう捜査してるんですか? そもそも例の少年たちの主犯が香西永太だって、知ってましたっけ」
「いや、まだ情報を流してない」

さらりと答える誉に巧は目を剥いた。誉は堂々と宣言する。

「やつらに教えるのは、私たちがグループの少年たちを当たってからだ」
「御堂さん、勝手やっていいんですか?」
「今更だな。最初にこちらの情報を無視したのは連中だ。防げた犯罪を防がなかった連中に、捜査を任せる気はない。私たちが調べた後に、二度手間だろうが三度手間だろうが駆けずり回るがいい」

酷薄な笑みを浮かべる魔王のごとき上司に、巧は今日ばかりは大賛成な気持ちだった。安定の御堂誉である。信用ならない連中には一切頼る気がないらしい。

「……ですね!」

巧は力強く頷き、誉の後について歩き出した。