「はい、はい。俺は全然そいつらは知らないです。でも永太は、最近やばいとかって言ってました」
「なにがやばかったんだろう」
「わかんないです。俺のこと、馬鹿にしててちゃんと話してくんなかったから。でも、サバイバルナイフを持ち歩いてたみたいです。護身用に」

護身用にナイフ。その言葉に巧は再び誉と顔を見合わせた。おそらく凶器のナイフと見ていいだろう。

「幸井くん、香西永太くんはそのナイフで刺殺された可能性が高いんです」

誉が重々しく言った。

「きみの証言が確かなら、彼は“仲良くしていたヤツら”に裏切られ、殺されたのかもしれないですね」
「そんな……永太……」

雪緒が長い睫毛を震わせ、今にも泣き出しそうな顔になる。突然の幼馴染の死、しかも自身がその死の真相に近いところにいると知ったらショックだろう。彼はまだ十六歳の少年なのだ。

「しかし、一課は今、強盗殺人だと想定しているようです。彼が資産家の子息だったことは有名ですから、学校など身近な人間を中心に捜査するのでしょう。Crackzは捜査線上に浮かんでいません」

雪緒の表情が変わった。わずかに眉が上がり、驚いた顔をしている。

「そうなんですか? 永太の交友関係とか、知らないのかな……」