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帝旺学院高校は、今日も物々しい雰囲気であった。校門前には教師が立ち、生徒たちは足早に登校していく。
巧と誉は、校門前の緑道ではなく、少し離れた路上で幸井雪緒の姿をキャッチした。

「おはようございます。刑事さん」

雪緒もまたこちらに気づき近づいてくる。半袖シャツが眩しい。季節は夏に近づいている。

「おはよう。お友達のこと、大変だったね」

巧が気づかわしげに言うと、雪緒は目を伏せた。

「今日、早退して顔を見に行ってきます。その、……解剖から戻ってきたそうなので」

まだ幼馴染が死んだことを受け止めきれない。そんな様子が雪緒からはありありと伝わってくる。

「幸井くん、すまないんですが、彼について知ってることを少し話せませんか? 学校もあるから、手短でいいんです」

誉の言葉に雪緒はこくりと頷く。

「あの、でもここでは」
「ああ」

確かにここは通学路だ。他の学生に見咎められるし、なにより香西永太の被害現場が目の前なのだ。雪緒からすれば、つらいに違いない。

「少しはずれましょう。ほんの五分ほどで終わります」