「そうそう帰れる実家でもない」
「へ?」
「実家には五年近く帰っていない」
五年……それは実家と折り合いが悪いのだろうか。
まずいことを聞いてしまったことは間違いない。もしかすると、家族に嫁に行けだの仕事を辞めろだの言われているのかもしれない。それならば、実家から足が遠のいても仕方ないだろう。
プライベートなことは、聞かれたくない人間もいる。これ以上掘り下げないほうがよさそうなので、巧は黙って洗い物を始めた。
「明日、幸井雪緒に会いに行こう」
不意に誉は言った。背後から聞こえたその言葉に、スポンジを持ったまま巧は振り向いた。
「御堂さん!」
「なんだ?」
「てっきり、俺、もう捜査しないのかと思ってましたぁ。一課出てきちゃったし」
自分でも情けない声になっているのがわかる。巧の嬉しいような、困惑したような様子に、誉がにやっと笑って見せた。
「一課が強殺で調べるなら、こちらは別な線を調べるべきだろう。Crackzと金で揉めたか、麻布の暴力団に見せしめで殺されたか」
「はたまた少年グループの仲間割れか」
誉がふふんと笑った。それは女性的ではないが、頼りになる上司の笑顔だ。
「そのあたりも含めて、明日幸井少年に会いに行こう。幼馴染の死に、なにか思い当たることを話してくれるかもしれない」
巧は満面の笑みで「はい!」と答えた。
「へ?」
「実家には五年近く帰っていない」
五年……それは実家と折り合いが悪いのだろうか。
まずいことを聞いてしまったことは間違いない。もしかすると、家族に嫁に行けだの仕事を辞めろだの言われているのかもしれない。それならば、実家から足が遠のいても仕方ないだろう。
プライベートなことは、聞かれたくない人間もいる。これ以上掘り下げないほうがよさそうなので、巧は黙って洗い物を始めた。
「明日、幸井雪緒に会いに行こう」
不意に誉は言った。背後から聞こえたその言葉に、スポンジを持ったまま巧は振り向いた。
「御堂さん!」
「なんだ?」
「てっきり、俺、もう捜査しないのかと思ってましたぁ。一課出てきちゃったし」
自分でも情けない声になっているのがわかる。巧の嬉しいような、困惑したような様子に、誉がにやっと笑って見せた。
「一課が強殺で調べるなら、こちらは別な線を調べるべきだろう。Crackzと金で揉めたか、麻布の暴力団に見せしめで殺されたか」
「はたまた少年グループの仲間割れか」
誉がふふんと笑った。それは女性的ではないが、頼りになる上司の笑顔だ。
「そのあたりも含めて、明日幸井少年に会いに行こう。幼馴染の死に、なにか思い当たることを話してくれるかもしれない」
巧は満面の笑みで「はい!」と答えた。