「クラブ遊びとかその辺ですか?」
「ああ。しかし一課は、香西が特殊詐欺の主犯格だったとまだ断定していない」
「俺たちの調査資料、陣馬警部補が提出してくれたんですよね」

今回の責任者の村中という刑事は誉と仲が悪そうだった。もしかすると、御堂誉の調査内容というだけで遠ざけられているのだろうか。

「見ていないわけではない。でも現状、私たちの情報は参考程度だな。事件発生直後の今は、優先すべきところから捜査する。だから一番可能性の高そうな物取りから調査しているんだ。香西永太の父親の職業や、本人の派手な生活ぶりは学内外でも有名だった」
「金持ち狙いの強盗殺人ってことですか?」
「村中警部は手堅いというか想像力がない」

トカゲのムサシの背を撫でて、誉が言う。

「香西永太の財布から金は抜かれていた。カードもない。しかし、腕時計がそのままだった」
「腕時計? ああ、あの高そうな? シリアルナンバーとか入ってて売りさばけなさそうだからじゃないですか?」
「ああ、現にあの時計は限定品でシリアルナンバーが刻印されている。売ればすぐに足がつく。しかし、それならクレジットカードも一緒だ。使えば簡単に足がつく」

肉だねを俵型に整形しつつ、巧が誉の顔を窺う。