「だって渚、恋愛偏差値底辺じゃん〜」


「う、うるさいっ…」


思わず私が膨れると、ケラケラ笑う舞美。


もうっ…!






舞美ったら…!


たしかに私は恋愛偏差値底辺だけどさぁっ


私は放課後、帰ろうと1人で正門に向かって歩いていた。


帰宅部の私とは違い、舞美は今日テニス部の活動があるため、一緒に帰れないのだ。


私は資料保管室に入った。

この学校の造りは少し複雑で、資料保管室には今私が入った扉ともうひとつ、保管室の向こう側に扉があるのだ。

そしてその向こう側の扉から出ると正門がすぐ目の前。

保管室を通るルートが、正門への最短ルートであることを私は知っていた。


そして私は奥にあるもうひとつの扉に行こうと、保管室の棚の間を歩き進めていると



「______。」

「______。」


誰かが話している声が微かに聞こえた。


誰かいるのかな…?


私は棚と棚の隙間から少しだけ顔を出して見てみると、


多分先輩…かなって人と朝比奈くんがいた。


先輩らしき人は朝比奈くんの肩を掴んで、


「お前のせいで、サラは俺と別れることになったんだ……!」


声を殺して言った。


「…でも僕、…」


「言い訳すんじゃねえっ…女たらしのくせにっ…お前さえいなけりゃっ…!」


先輩が右腕で握りこぶしをつくって大きく振り上げた。


ヤバいっ…このままじゃ朝比奈くんが殴られるっ…


私はこのまま見ていられず、バッと先輩と朝比奈くんの間に入り、


「うぐっ…」


見事に左の頬にパンチをくらって床に崩れ落ちた。


いきなり出てきた女子生徒にパンチをくらわせてしまった先輩は慌てたけど、殴りそびれたことに気づき


「てめっ…」


朝比奈くんに再びこぶしを振りかぶった。