ピピピピピッ…と目覚まし時計の音が遠くの方で聞こえる。


無意識に目を瞑ったままサイドテーブルの上で手を彷徨わせ、目覚まし時計を止めた。


重い瞼を開けるとそこには見慣れた天井が。


私は視界をはっきりさせるように、数回目をパチパチと瞬きしてゆっくりと身を起こした。


「ふわぁっ…ぁっ…」


大口を開けて欠伸をしながらベッドから降りる。

「いてっっ…なによもう、こんなとこにボールペン置きっぱなしにしたのは…って私か。」


何も考えずに下に降ろした足の裏に、ボールペンのクリップ部分が突き刺さる。


そのまま立ち上がったもんだから、足をグイッと内側に曲げて足の裏を見ると、くっきりとクリップ部分の跡がついていた。


あー、朝からツイてない。


足を今度こそ安全なところに降ろし、私は制服に着替えて下に降りた。


リビングに行くと、もう朝ごはんは出来上がっていた。

炊きたての白米と、味噌汁の匂いがふわっと漂ってくる。

「渚ー、このお味噌汁テーブルに持って行ってー」

お母さんに呼ばれてキッチンに行き、お味噌汁の入ったお椀を受け取ると、お母さんに


「こぼさないでよ?」


と言われた。

「大丈夫だよ。」

「ほんと?…あんたは昔っからどんくさいんだから…。」

自分で呼んでおいて心配そうな声を出すお母さんに背を向け、私はお椀をテーブルに置いた。


たしかにお母さんの言ってることは間違ってない。

私はどんくさいのだ。

しかも、”超”が付くほどの。

例えばこのお味噌汁。

前に、お味噌汁を運ぶよう頼まれ、「落とさないでね」と後ろから声をかけられた次の瞬間、お椀が落下したことがあった。

さらにハンバーガー。

家族でハンバーガーショップに行った時、店内の席が空いてなかったため、外で食べることにした。外に出ると私の大っ嫌いなハトが寄ってきて、驚いて立ち上がった瞬間食べかけのチーズバーガーを落とした。


ちなみに私はその後、同じことをもう1回やらかした。




…とまぁ、こんな感じで私はずっとどんくさいの道を歩いてきたのだ。

こんな性格、いつかは直るのかねぇ…。

そんなことをぼんやりと考えながら朝ごはんを食べ終わると、私は「いってきまーす」と言って家を出た。