「…凄い」

 ジェニファとジュリエは、思わず呟いた。
 リアンのピアノ演奏を聴くのは初めての二人だったが、こんなにも素晴らしいとは知らなかったのだ。

「…リアン、お義父様以外に、誰かにピアノ習ってたの?」

 リアンがマドルスと暮らすようになったのは、一年程前からだ。
 それを知っているジェニファは、どうしても聞きたくなった。

「うん、パパからピアノ教わってた!」

「…お義兄様から」

 ジェニファはフェルドとは面識はなかったが、昔行われたピアノコンクールで、フェルドのピアノ演奏を聴いた事がある。
 その時の感動を、ジェニファは今でも覚えている。
 フェルドのピアノも、世界中の多くの者を虜にしたマドルスの演奏のように、心に響く演奏だったのだ。
 ジェニファはリアンに二人の血が流れている事を改めて感じた。

「…リアン素晴らしいわ」

 ジェニファは呟いた。

「…ジュリエ、あなたもリアンに負けないようにレッスンしなくちゃね」

 ジェニファは、まだリアンを見てうっとりしているジュリエに向かい言った。