顔を洗い終わったリアンは、食事をする部屋へと向かった。

「おはようございます」

 食卓に付いていたスタルス達に向かい、リアンは頭を下げた。

「おはよう」

 ジェニファとジュリエはにこやかにリアンを出迎えたが、スタルスは返事をせず、新聞を読み続けている。
 執事が運んできた、ほんのりと湯気立つスープが皆の前に置かれると、朝食が始まった。
 昨日の夕飯の時もそうだが、スタルス家の食卓は静かだ。しかし、そんな沈黙を破るように、スタルスが口を開いた。

「…リアン、学校ではソーヤ家の名に恥じない振る舞いをしろよ」

 目玉焼きを食べていたリアンに、視線を向ける事なくスタルスは言った。

「…はい」

 リアンはフォークを置き、静かに頷いた。
 その言葉を最後に、食卓はまた沈黙に包まれる。
 リアンは息が詰まりそうだった。そして、愉快だったジャンとの朝食を思い出した。
 大笑いしながら食べたハムステーキ。具沢山なサラダ。朝っぱらからステーキなんて日もあった。
 ジャン元気かな…
 死んだとは知らないジャンの事を考えているうちに、リアンはマドルスを亡くした悲しみが少し和らいだ。