その一言で部屋の中は、沈黙に包まれて行く。
 リアンは涙を我慢し、食事を続けた。しかし、食欲など湧かなかった。そして、リアンは殆どの料理を残してしまった。

「うちの料理は口に合わないか?」

 スタルスは眉を寄せている。

「…あなた」

 たまらずジェニファが言った。

「食欲がないだけよね…無理して食べなくてもいいからね」

 ジェニファは、優しい笑顔をリアンに向けている。
 食事を終えたリアンは、自室に戻り荷物の整理を始めた。
 複数並べた写真立てには、両親とジャンの他に、マドルスの写真が加わっている。
 そしてフェルドの絵を壁に飾り付けた後、ベッドに寝そべり、暫く呆然と眺めていた。
 疲れていたのだろう。リアンはそのまま眠りの世界に落ちていった。

「おはようございます」

 執事の声でリアンは目を覚ました。
 目の周りは泣きながら眠っていたせいか、涙の跡でがびがびになっている。
 リアンは洗面所に向かい、顔を洗った。そして、鏡に写る自分の顔を見詰めた。実に悲しそうな顔をしている。
 リアンは頬を叩き、気合いを入れた。いつまでも悲しんではいられない。今日から新しい学校に行く事になっているのだ。