あんなに流した涙は渇れることなく、流れ落ちていく。
 暫くベッドに腰掛けて涙を流していると、執事が呼びに来た。
 リアンは涙を洋服の裾で拭った。そして部屋を出ると、執事の後を静かに付いて行った。
 執事が案内した部屋の中では、三人が長テーブルの前に座っていた。スタルスとジェニファとジュリエだ。
 長テーブルの上には、食器やパンが並んでいる。そして、リアンは執事に案内された席に座った。

「…今日からお世話になります…よろしくお願いします」

 リアンはスタルス達に向け、緊張した面持ちで頭を下げた。

「ごめんね出迎えられなくて。リアンはもう我が家の一員なんだから、本当の家族だと思って接してね」

 ジェニファは、にこやかな笑顔を浮かべている。

「よろしくね」

 リアンと同い年のジュリエは、恥ずかしそうに言った。
 スタルスはリアンをちらりと見るだけで、返事はしなかった。
 そして夕食が始まった。
 リアンは食事をしていても、悲しみのせいであまり味を感じなかった。
 ついこの間までマドルスと会話をしていた事を思い出し、自然と涙が込み上げてくる。
 ぽとりと落ちた涙で、スープはしょっぱくなった。

「食事中に泣くな!」

 泣き声を上げていた訳ではないが、頬に伝う涙を見て、スタルスは叱り付けた。