洗面所で身支度を済ませたリアンは、朝食の席に着いた。

「いただきます」

 リアンはうれしそうに言うと、トーストにかぶり付いた。
 リアンはこの朝食の時間が大好きだ。
 夕食のような一人でする食事よりも、誰かとする食事の方が、美味いに決まっている。
 それに朝からやけにテンションの高いジャンは、毎日のように、朝食の席でおもしろい話をしてくれる。毎日話していて、よく話が尽きないものだ。
 今も丁度、ジャンのトークショーが始まったところだ。

「リアンいいか、好きな女をデートに誘う時は、バラの花束をプレゼントしろ…俺はそれで成功してきた」

 ジャンはトーストに、バターを塗りたぐりながら言った。

「…」

 リアンはハムステーキを切っていた手を止め、口をポカーンと開けてジャンを見詰めた。
 ジャンは十二才の少年に、女の口説き方をレクチャーしだしたのだ。
 リアンが口をアングリするのも、しかたがないだろう。
 ジャンはそんなリアンの様子はおかまいなしに、さらに話を続ける。